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脳卒中による運動麻痺や姿勢制御障害は、損傷部位や病態により多様な症状を呈します。特に、皮質脊髄路(錐体路)の損傷は、随意運動の制御に深く関与し、内包後脚や脳幹での損傷は反対側の片麻痺を引き起こします。また、被殻出血は内包を巻き込みやすく、重度の対側片麻痺を呈することが多く、姿勢反射や筋緊張調節の乱れにより、座位・立位バランスの維持が困難となる場合があります。
本記事では、皮質脊髄路の損傷と麻痺パターン、被殻出血による姿勢制御障害、そしてそれらに対するリハビリテーション戦略について、最新の知見を交えて解説します。
🔍 皮質脊髄路の損傷と麻痺パターン
皮質脊髄路(Corticospinal Tract, CST)は、随意運動を司る主要な下行性経路であり、特に内包後脚や脳幹での損傷は反対側の片麻痺を引き起こします。
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内包後脚の損傷:顔面・上肢・下肢に及ぶ重度の麻痺が生じることが多く、純粋運動性脳卒中(pure motor stroke)の典型例です。
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大脳皮質の限局病変や部分的白質損傷:麻痺は一部に留まり、残存経路により部分的な機能が維持されます。
急性期における皮質脊髄路の損傷評価は、運動予後の予測において重要です。特に、内包後脚レベルでの皮質脊髄路損傷は、3か月後の運動機能回復の予測因子として有用であることが示されています。
🧠 被殻出血による姿勢制御障害
被殻出血は、内包を巻き込みやすく、重度の対側片麻痺を呈します。さらに、基底核回路の障害により姿勢反射や筋緊張調節が乱れ、座位・立位バランスの維持が困難となる場合があります。基底核・視床を含む出血では、脳幹網様体との連携障害で自動的姿勢制御が破綻し、転倒リスクが高まります。
リハビリ評価では、深部感覚の障害による感覚性運動失調や、固有受容感覚低下による立位保持困難(視床性不安定)にも留意する必要があります。
また、被殻出血後の3か月時点での歩行自立予測には、12段階片麻痺機能評価とFIM認知スコアが有用であることが報告されています。
🛠 リハビリ戦略と神経可塑性の活用
リハビリテーションにおいては、課題指向型トレーニング(実際の日常動作を繰り返す訓練)と補助療法(装具、電気刺激、ロボットリハ、ミラーセラピー等)を併用し、訓練効果の最大化を図ります。
神経可塑性を促進するためには、残存する神経経路の活用や、視覚・聴覚のキューイングを組み合わせた訓練が有効です。特に、上縦束(Superior Longitudinal Fasciculus, SLF)や下縦束(Inferior Longitudinal Fasciculus, ILF)の機能を考慮したアプローチが、運動や認知機能の回復に寄与する可能性があります。
📌 まとめ
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皮質脊髄路の損傷部位により、麻痺の範囲や重症度が異なります。
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被殻出血は、姿勢制御障害や感覚性運動失調を引き起こす可能性があり、リハビリ評価時にはこれらの要素に注意が必要です。
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リハビリ戦略では、課題指向型トレーニングと補助療法を組み合わせ、神経可塑性を活用した個別化されたアプローチが求められます。
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上縦束や下縦束の機能を考慮した訓練が、運動や認知機能の回復に寄与する可能性があります。
これらの情報が、臨床現場でのリハビリテーション戦略の立案や、患者様への適切なアプローチの一助となれば幸いです。
参考文献
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Imaging for Prediction of Functional Outcome and Assessment of Recovery in Ischemic Stroke - PMC.
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Functional Neuroanatomy for Posture and Gait Control.
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Diagram depicting the language-related circuit in humans.
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Inferior longitudinal fasciculus - Wikipedia.
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Left vs. Right Brain Stroke | HealthFocus SA | University Health.
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Auditory spatial cueing reduces neglect after right-hemispheric stroke - PubMed.