
【立位姿勢制御の基本】
- 支持基底面(Base of Support, BOS)内で、重心(Center of Mass, COM)を管理することが姿勢制御の基本です。COMは身長の約2/3の高さに位置し、常に動揺しているため、圧中心(Center of Pressure, COP)との関係でバランスが保たれます。
- 立位姿勢は逆振り子モデルで捉えられ、足関節と股関節が重要な役割を果たします。足関節は矢状面、股関節は前額面の姿勢制御に関与し、これらの関節の調整がバランス保持に必要不可欠です。
【COPを用いた姿勢制御の評価】
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COPの特徴と制御
- 矢状面では足関節の背屈モーメントが、前額面では股関節の内外転が姿勢制御に関与します。
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COP解析の指標
- 平均速度、実効値、総軌跡長などの指標が用いられ、姿勢の安定性を評価。
- Stabilogram Diffusion Analysis(SD解析)によって、
- 短期的な開ループ制御
- 長期的な閉ループ制御 の2種類の制御機構が示されています。
【立位制御に関する疾患別の知見】
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切断患者
- 切断側は支点が固定されるため、非切断側で大きなCOP動揺が見られます。
- しかし、動揺が大きいからといって、必ずしも姿勢制御が劣っているわけではなく、代償的な制御戦略が働いている場合もあります。
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片麻痺患者
- 非麻痺側を中心とした立位制御が構築され、荷重の非対称性は運動機能の自立度に影響。
- しかし、非対称的でも効率的な姿勢制御が構築される場合もあり、リハビリの際にはこの点を考慮する必要があります。
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パーキンソン病患者
- レボドパ治療は随意的な姿勢調節を改善するが、静的立位制御には効果が限定的。
- 深部脳刺激療法はCOP指標の非対称性を改善する効果が報告されています。
【立位制御における感覚情報の役割】
- 体性感覚、視覚、前庭感覚は、立位制御において不可欠。
- 感覚遮断実験では、下肢の体性感覚が低周波の重心動揺を制御していることが明らかとなっています。
- 感覚情報が不十分な場合、近位筋群や対側筋群が代償的に働くことでバランスを保つ戦略がとられます。
【リハビリテーション医療での意義】
- 立位姿勢は個人特有の「body schema」として中枢に形成され、生活環境や経験によって再構築されます。
- COPの位置や動揺速度の解析は、リハビリ効果の判定に有効。
- 患者ごとに構築された立位の姿勢制御戦略を理解することが、適切なリハビリ介入につながります。
参考文献;福井勉. 股関節制御と身体重心. 理学療法―臨床・研究・教育, 13巻, pp. 2-6, 2006年.
長谷公隆. 立位姿勢の制御. リハビリテーション医学, 43巻, 8号, pp. 542-553, 200