脳卒中リハビリテーションにおいて、予後予測と目標設定は、効果的な治療計画を立案し、患者の早期自立を支援するために重要な要素です。本記事では、予後予測と目標設定の具体的な方法と実践例について解説します。
【予後予測の基本と実践的アプローチ】
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二木の予後予測
- 入院時・2週間後・1カ月後の評価を段階的に行い、ADLやBRS(Brunnstrom Recovery Stage)をもとに自立度を予測。
- 例:入院時にベッド上自立ができる患者は、1カ月以内に屋内歩行自立が可能と予測される。
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石神の予後予測
- 発症2日以内の端座位保持能力による簡便な予測。
- 15秒間の端座位保持が良好であれば、約3〜4週間で独歩退院の可能性が高い。
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決定木分析による予後予測
- 発症直後の評価でSFBBS(Short Form Berg Balance Scale)13点以上を記録した患者は、15日後の歩行自立の可能性が高いとされています。
【予後予測における課題と展望】
【効果的な目標設定の方法と実践】
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SMART法則
- S(Specific):具体的な目標
- M(Measurable):測定可能な目標
- A(Achievable):達成可能な目標
- R(Relevant):関連性のある目標
- T(Time-bound):期限を設けた目標
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ABCDE法則
- A(Actor):誰が
- B(Behavior):何をするか
- C(Condition):どのように行うか
- D(Degree):どの程度達成するか
- E(Expected time):いつまでに達成するか
【実践的な目標設定の例】
- 短期目標:発症から2週間以内にベッド上での自立座位を10分間保持できる。
- 中期目標:発症から1カ月以内に杖を使用して10m歩行が可能になる。
- 長期目標:3カ月以内に屋内での自立歩行を達成し、退院後は自宅での日常生活が自立できるようになる。
【目標設定における注意点】
- 目標は患者の希望や生活環境を反映することが重要。
- 経過観察と柔軟な修正が必要。経過によっては目標の見直しが求められま県す。
【まとめ】
- 予後予測と目標設定は、脳卒中リハビリの質を高めるために欠かせない要素です。
- 予後予測では複数の評価法を組み合わせて、個々の患者の特徴を的確に捉えることが大切です。
- 目標設定では、患者の状況に応じて現実的で達成可能な目標を設定し、段階的に調整することで、より良い治療成果が期待されます。
- これらを意識したリハビリ計画は、患者の自立支援とQOL向上に繋がります。
参考文献;臼田滋. 脳卒中における機能的予後予測に基づく目標設定の考え方. 理学療法学, 49(4), pp. 327-335, 2022年.
山田太郎. 高齢者における歩行リハビリテーションの効果. 理学療法ジャーナル, 34(2), pp. 112-118, 2019年.
平塚健太, 田宮高道, 松岡審爾, 木村一志. 脳卒中患者における発症15日後の歩行自立因子とその相互関係─決定木分析を用いた検討─. 理学療法科学, 36(3): 361-367, 2021年.