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AFOとKAFOの選択基準!理学療法士が押さえておきたいポイント


脳卒中などの神経疾患による歩行障害において、AFO(短下肢装具)とKAFO(長下肢装具)は、歩行機能の再建において重要な役割を果たします。しかし、適切な装具の選択には、患者の病態や回復ステージ、歩行のパターンなどを総合的に判断する必要があります。本記事では、最新のエビデンスを基に、理学療法士が押さえておくべきAFOとKAFOの選択基準を解説します。


1. AFOとKAFOの基本的な違い

  • AFO(Ankle Foot Orthosis)

    • 足関節と足部をサポートする装具。
    • 主に下垂足や軽度の膝折れ防止に使用。
    • 歩行の安定性向上やエネルギーコストの低減が期待される。
  • KAFO(Knee Ankle Foot Orthosis)

    • 膝関節から足部までをサポートする装具。
    • 重度の膝関節不安定性や膝折れ防止に適応。
    • 立位保持が困難な重度片麻痺患者の早期リハビリに使用される。

2. 選択基準のポイント

① 回復ステージでの選択

  • 急性期(発症1ヶ月以内)

    • 機能回復が期待される時期であり、膝関節の安定性が確保できない場合はKAFO、軽度であればAFOが適応されます。
    • 調節機能があり、病態の変化に対応できる装具が望ましい。
  • 回復期(1〜3ヶ月)

    • 現在の病態に合わせた装具選択。膝折れが軽減されていればAFOへの移行を検討します。
  • 慢性期(4ヶ月以降)

    • 自立歩行が目標。歩行の安定性、装具の着脱しやすさなどADLに適した装具を選択します。

② 病態別の選択ポイント

  • 関節可動域(ROM)

    • 背屈10°以上:AFOで問題なし。
    • 背屈-5°以下尖足変形が強い場合は、KAFOで膝関節の安定性も確保。
  • 筋力(MMT

    • 膝関節支持が困難:KAFOを優先。
    • 膝関節の支持がある程度可能:AFOで十分。
  • 歩容

    • 膝折れ傾向:KAFOが適応。
    • 軽度の下垂足:AFOで補助。

③ 装具の使用環境

  • 屋外での長距離歩行が多い場合は、KAFOでの安定性を優先。
  • 屋内での短距離移動中心なら、軽量で着脱しやすいAFOが適している。

3. ロボット型装具の活用

近年は、ロボット型のAFOやKAFOが注目されています。特にバイオニックレッグ足首アシスト装置は、動作をアシストしながら反復練習を行うことで、より自然な歩行パターンの習得が期待できます。

  • メリット

    • 歩行練習の質と量を向上。
    • 運動学習を促進。
  • 注意点

    • 使用にあたっては患者の身体状況とリスク管理が必要。

4. 選択時のポイントまとめ

  1. 病態評価を丁寧に行う

    • ROM、筋力、痙縮、感覚障害の有無をチェック。
  2. 生活環境を考慮する

    • 屋内・屋外での利用シーンを想定して選択。
  3. 装具の調整と再評価を忘れずに

    • 長期使用による変化に注意し、適宜調整する。
  4. 新しい技術も積極的に取り入れる

    • ロボット型装具などの活用も視野に入れる。

【結論】

AFOとKAFOの選択は、単純に病態だけでなく、生活環境やADL、自立度などを多面的に評価することが重要です。また、装具の使用中も適切なフォローアップと調整を行い、患者が安全で快適な歩行を実現できるようサポートしましょう。

理学療法士として、「今、何が必要か?」を的確に判断し、最適な装具選択を行っていきましょう!

 

参考文献;増田知子. (2019). エビデンスからみた下肢装具と理学療法. 日本リハビリテーション医学会誌, 56, 277-281.

渡辺英夫. (2007). 脳卒中の短下肢装具―病態によるベストな選択. 日本義肢装具学会誌, 23(2), 107-112.

上野奨太、髙屋成利、増田知子、吉尾雅春. (2022). 脳卒中患者の歩行練習における長下肢装具から短下肢装具への移行に要する日数に関連する因子. 理学療法学, 49(5), 361-366.