脳卒中リハビリにおいて、長下肢装具(KAFO)は歩行機能を補助するための重要な装具です。しかし、KAFOから短下肢装具(AFO)への移行時期の判断は、リハビリの進行において大きな課題となります。本記事では、最新の研究結果を基に、KAFOの使用期間に影響を与える因子について文献から引用し解説します。
1. 研究の目的
本研究では、脳卒中患者においてKAFOからAFOへの移行に要する期間に影響を与える入院時因子を調査しました。特に、患者の身体機能や認知機能、年齢などの要素がKAFOの使用期間にどのように関連するかを明らかにしています。
2. KAFO使用期間に関連する因子
① 下肢Brunnstrom Recovery Stage(BRS)
- 入院時の下肢運動麻痺の回復ステージが低いほど、KAFOの使用期間が長期に及ぶ傾向。
- 麻痺の重症度が高いと、AFOへの移行が遅れる可能性がある。
② Scale for Contraversive Pushing(SCP)点数
- Pushingの程度が強い患者は、バランスの問題が大きく、KAFOの使用期間が延びやすい。
- Pushingは歩行能力の回復に負の影響を与えるとされている。
③ Functional Independence Measure(FIM)運動項目
- 日常生活動作(ADL)の自立度が低いほど、KAFOの使用期間が長引く。
- ADLの自立度向上が、KAFOからの早期移行に重要。
④ 年齢
- 高齢であるほどKAFOの使用期間が長くなる傾向。
- 年齢が高い患者は、筋力やバランス能力の回復に時間がかかるため、長期使用となりやすい。
3. KAFOからAFOへの移行基準
KAFOからAFOへの移行は、以下の基準で判断されます。
- 麻痺側下肢の立脚時に膝折れが見られないこと。
- 理学療法士による一人介助または自立歩行が可能であること。
- 歩行中に安定したバランスが維持できること。
これらの条件を満たすことで、安全にAFOへの移行が可能となります。
4. 実践でのポイント
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入院時評価の徹底
- 下肢BRS、SCP、FIM運動項目、年齢を評価し、KAFOの使用期間を予測。
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個別対応の重要性
- 患者の状態に合わせたテーラーメイドの装具作製を検討。
- 長期使用が予測される場合は、早期に個人用KAFOを作製。
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経過観察と再評価
- 定期的に評価を行い、AFOへの移行時期を見極める。
- 装具の使用期間を最適化し、患者のQOL向上を図る。
5. 理学療法士への提言
- KAFO使用期間は患者の身体機能だけでなく、認知機能や年齢によっても左右されます。入院時の徹底した評価と、個別の経過観察が重要です。
- 移行時期を適切に見極めることで、患者の自立支援やQOL向上に貢献できます。
【結論】
本研究から、KAFOの使用期間には下肢の回復ステージ、Pushingの重症度、ADLの自立度、年齢が強く影響することが明らかになりました。これらの因子を踏まえた適切な装具選択と使用期間の設定が、より効果的なリハビリテーションにつながります。
理学療法士として、科学的根拠に基づいた判断を心掛け、患者一人ひとりに最適な装具療法を提供していきましょう!
参考文献;上野奨太、髙屋成利、増田知子、吉尾雅春. (2022). 脳卒中患者の歩行練習における長下肢装具から短下肢装具への移行に要する日数に関連する因子. 理学療法学, 49(5), 361-366.