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股関節の痛みと腸腰筋の関係性とは?リハビリと歩行改善の秘訣

 

【はじめに】

股関節は身体の安定性と運動において重要な役割を担う関節です。特に股関節周囲筋の働きは、日常動作や歩行に大きく関与しています。本記事では、股関節の筋発揮特性、痛みと機能障害、そして腸腰筋の機能的役割について、最新の研究を基に総合的に解説します。


1. 関節角度による股関節筋の発揮特性

1-1. 筋の発揮トルクの特性

  • 腸腰筋は、深い屈曲位でも高い屈曲トルクを発揮し、伸展位でも一定のトルクを維持できる特性があります。
  • 大腿直筋は、屈曲10〜30°で最大の屈曲トルクを発揮し、伸展位や深い屈曲位ではトルクが低下します。
  • ハムストリングスは、深い屈曲域で強い伸展トルクを発揮しますが、伸展位ではトルクが急激に減少し、大殿筋が主動筋となります。
  • 内転筋群は、関節角度によって屈筋作用と伸筋作用が切り替わり、伸展位では屈筋、屈曲位では伸筋として機能します。

1-2. 臨床的意義

  • 筋力評価の際には、関節角度による筋のトルク特性の違いを考慮する必要があります。
  • 特に、腸腰筋や内転筋の機能を適切に評価することで、より効果的なリハビリテーション計画が立てられます。

2. 股関節の痛みと機能障害

2-1. 痛みの原因と分類

股関節痛は、以下のような多岐にわたる原因で生じます。

2-2. 変形性股関節症の進行と治療法

  • 進行とともに関節裂隙の狭小化、骨棘形成、骨硬化、骨嚢胞形成が進行します。
  • 治療には保存療法(体重管理、運動療法薬物療法)と手術療法(関節温存術、人工股関節置換術)があり、年齢や病期に応じて選択されます。

2-3. 臨床での注意点

  • 早期発見と適切な介入が、症状の進行を抑制しQOLの維持に繋がります。
  • 股関節の可動域や筋力の維持は、痛みの軽減と機能改善に効果的です。

3. 腸腰筋の機能的役割と歩行への影響

3-1. 腸腰筋の解剖学的特性

  • 腸腰筋腸骨筋大腰筋から構成され、股関節屈曲に大きく関与します。
  • 骨盤および脊柱に付着しており、体幹の安定性保持にも寄与します。

3-2. 歩行中の腸腰筋の役割

  • 遊脚期後半において腸腰筋の活動は増大し、ステップ長の増大に寄与していることが示されています。
  • 歩行速度の増加に伴い、腸腰筋は立脚期後半から遊脚期前半にかけて活動を強め、歩行速度の向上に貢献しています。

3-3. 臨床的意義とリハビリテーション戦略

  • 腸腰筋の強化は、ステップ長の維持・向上に効果的であり、特に高齢者の歩行機能改善に有効です。
  • リハビリテーション戦略としては、
    • 段階的負荷トレーニン:股関節屈曲運動を少ない負荷から始め、徐々に負荷を増加させる。
    • 遊脚期後半を意識した歩行訓練:ステップ長を意識し、腸腰筋がしっかり働くようにトレーニング。
    • 動的バランス訓練体幹と股関節の協調性を高め、腸腰筋の安定性と出力を向上させる。
    • ストレッチング腸腰筋の柔軟性を確保し、適切な関節可動域を維持する。

【結論】

股関節の機能と腸腰筋の役割は、歩行能力や日常生活動作の質に直結します。特に腸腰筋は、歩行速度の維持・向上やステップ長の確保に重要であり、リハビリテーションにおいてはその特性を踏まえた評価と介入が求められます。

股関節周囲筋の詳細な理解と効果的なトレーニング戦略が、より良いQOLの実現に寄与するでしょう。

 

参考文献;

1.Ogaya, S., Tateuchi, H., Takashima, S., & Ichihashi, N. (2011). 関節角度の違いによる股関節周囲筋の発揮筋力の変化. 理学療法学, 38(2), 97-104.

2.種子田斎 (2000). 股関節の痛みと機能障害. 理学療法科学, 15(3), 89-94.

3.Jiroumaru, T. (2016). 腸腰筋を含めた股関節屈曲筋群の機能的役割の再考-歩行速度,ステップ長を変化させた歩行中の腸腰筋を含めた股関節屈曲筋群の活動-. 立命館大学大学院スポーツ健康科学研究科.