はじめに
本日もご覧いただきありがとうございます。本日も臨床で活用できる情報を発信していきます。
今回のテーマは「運動失調のリハビリテーション」についてです。
ぜひ最後までご覧ください。
1. 運動失調とは?
運動失調(Ataxia)は、運動麻痺がないにもかかわらず、筋の協調がうまく働かずに、円滑な姿勢保持や動作ができない状態を指します。
主な特徴:
- 運動の方向・強さが調整できない(測定異常)
- 協働筋と拮抗筋の協調が崩れる
- 体幹のバランス保持が難しい
- 反復運動のリズムが乱れる
運動失調は病巣ごとに分類され、主に以下の4つに分けられます。
- 小脳性運動失調(歩行や手の協調運動の障害)
- 脊髄性運動失調(深部感覚障害に伴う不安定な歩行)
- 前庭性運動失調(平衡感覚の乱れによるめまい・ふらつき)
- 大脳性運動失調(前頭葉障害に関連したバランス不良)
2. 小脳の役割と運動学習
小脳は、運動の「誤差修正」と「動作の最適化」に関わる重要な役割を果たします。
特に、以下の2つの内部モデルが運動制御に深く関与しています。
- 順モデル(Forward Model):運動を開始する前に、動作の結果を予測し、修正する機能
- 逆モデル(Inverse Model):目標とする動作に対して、最適な運動指令を作成する機能
これらの働きが低下すると、運動の精度が低下し、動作がぎこちなくなります。
3. 運動失調に対するアプローチ
① 充分な評価を行う
- ICARS(International Cooperative Ataxia Rating Scale)
- SARA(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia) などを活用し、症状の重症度を把握する。
② 適切な環境設定
- 視覚の過剰な代償を避ける(鏡を見ながらの動作は控える)
- 安全なサポート環境を整え、恐怖感を減らす
③ 動作のフィードフォワード化
- 速いテンポの動作練習(エアロバイク・リズミカルな歩行)
→ 連続的なリズム運動が円滑な動作習得につながる - 視覚誘導を活用したバランストレーニング
→ 代償を防ぎながら、安定した姿勢制御を促す
④ 近位関節への体性感覚入力
- 股関節や肩関節への軽い触覚刺激を活用
- 過剰な固定を減らし、円滑な動作へ誘導
⑤ ステッピングトレーニング
- 歩行のCPG(中枢パターン発生器)を活性化するために、トレッドミルや段差昇降を活用
- 一定のリズムで歩行動作を繰り返し、適応力を高める
⑥ 重力負荷の調整
- ホイストを利用した免荷歩行練習
- プールでの水中歩行
- 軽い支持を利用した歩行練習(ライトタッチでバランス改善)
4. 最後に
運動失調に対するリハビリでは、「適切な動作学習」と「代償を最小限にする環境作り」が重要です。
小脳の可塑性を活かした反復練習を取り入れ、動作の予測と制御能力を高めるアプローチを意識しましょう!
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。
参考文献;運動失調に対するアプローチ 後藤淳 関西理学 14:1ー9,2014