はじめに
ご覧いただきありがとうございます。本日も臨床で役に立つ情報を更新していきます。
本日のテーマは急性期の小脳失調とリハビリのポイントについてです。
小脳出血の患者様を担当する際や、リハビリを行う際にぜひ活用してみてください。
1. 急性期小脳出血とは?
小脳は、運動制御・バランス調整・姿勢維持・眼球運動に関与し、前庭系・視覚系・固有感覚系と密接に連携しています。小脳出血が発生すると、以下の症状が出現します。
主な症状
- 嘔気・眩暈(64.7%)
- 四肢失調(55.9%)
- 体幹失調(47.1%)
- 嚥下障害(55.9%)
- 構音障害(23.5%)
- 認知機能障害(70%)
また、血腫の大きさや部位によって、症状の重症度や回復の可能性が異なります。
2. 機能予後に影響する因子
急性期小脳出血の予後を決める重要な因子は以下の通りです。
✅ 意識障害の有無 ➡ 血腫が大きいほど意識障害が出やすく、機能予後が悪化。意識障害がある場合、自宅退院は困難。
✅ 血腫量 ➡ 10ml未満:自宅退院36%
➡ 10-30ml:自宅退院33%
➡ 30ml以上:自宅退院0%(全例に嚥下障害あり)
✅ 病巣の部位 ➡ 小脳半球損傷:運動失調は軽度で予後良好
➡ 虫部損傷:体幹失調が強く、歩行困難
➡ 半球+虫部損傷:ADL低下が著しく、機能予後不良
✅ 嚥下機能 ➡ 嚥下障害があると、回復期への転院率が上昇。
➡ 退院時に嚥下障害があると、自宅退院が困難な可能性が高い。
✅ 認知機能 ➡ 認知機能が低下している場合、自宅復帰が難しくなる。
➡ 小脳損傷による前頭葉の血流低下(Crossed Cerebellar Diaschisis)が、記憶・遂行機能の障害につながる。
3. 急性期リハビリのポイント
① 早期離床を目指す
- リハ開始:発症1.3日後(平均)
- 歩行訓練開始:平均7日目
- 嘔気・眩暈が強い場合は、ベッド上での体位変換や座位保持練習から開始。
② 嚥下・構音障害への対応
- 反復唾液嚥下テスト(RSST)や水飲みテスト(MWST)を実施
- 嚥下障害あり:頸部前屈・回旋を用いた代償嚥下
- 摂食形態の調整(ゼリー・ペースト食の活用)
③ バランス訓練の工夫
④ 視覚・前庭機能のトレーニング
⑤ 認知機能の評価とアプローチ
おわりに
小脳出血においては、血腫の量や部位、さらに意識障害の有無が予後に大きな影響を与えます。また、嚥下障害や認知機能の障害が存在する場合、患者が自宅に退院することが困難になる可能性が高くなります。
治療においては、早期の離床と適切なフィードフォワード学習が運動機能の改善に重要であることが示されています。さらに、視覚、前庭機能、バランス訓練を組み合わせたリハビリテーションが、患者の回復に効果的であるとされています。
本日もご覧いただきありがとうございました。
参考文献:前島伸一郎ほか, 「急性期病院における小脳出血の機能予後と転帰」, 脳卒中, 33巻1号, 2011年, pp. 98–105.