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リハビリで重要なのは“筋力”より“感覚”!?セラピストが知るべき感覚戦略とは

 

本日もご覧いただきありがとうございます。今回のテーマは姿勢制御における感覚についてです。

 

姿勢制御は“感覚の使い分け”で成り立っている

 

 ヒトは二足直立という不安定な姿勢を保つために、常に複数の感覚入力を統合して姿勢を調整しています。特に重要な3つの感覚が以下です:

  • 視覚:垂直方向の感覚基準を与える
  • 前庭感覚:重力方向や頭部加速度の情報を提供
  • 体性感覚:主に足部〜下肢からの固有感覚が支持面との関係を捉える

これらは中枢神経系(CNS)で統合され、最適な姿勢戦略が構築されます。

 

感覚は“平等”ではなく、“環境に応じて重みづけが変わる”

 ある感覚の信頼性が低くなると、それ以外の感覚への重みづけ(weighting)が高まり、代償的に姿勢を保ちます。例えば、

  • 暗所や閉眼時:視覚への依存ができないため、体性感覚や前庭感覚が強調される
  • 不安定な地面やフォームパッド上:足底からの体性感覚が不正確になるため、視覚や前庭にシフトする

など、これが「感覚の再重みづけ(sensory reweighting)」と呼ばれる仕組みです。つまり、姿勢制御は固定的な感覚依存ではなく、柔軟なシステムとして働いているのです。

 

病態や年齢でも「感覚の使い方」は異なる

  • 高齢者では視覚依存が強い傾向があり、前庭や体性感覚が劣化すると転倒リスクが上がります。
  • 小児(特に4〜10歳未満)では視覚への依存が強く、他感覚との統合は発達途中です。

このように、対象者ごとに異なる感覚の使い方を把握する視点が必要です。


感覚再重みづけを“引き出す”エクササイズの考え方

 ある研究では以下のようなエクササイズによって、特定の感覚への重みづけが変化することが示されています

🔸バランスボードエクササイズ(不安定立位)

→ 視覚入力の信頼性を高め、視覚依存を促す

🔸Gボール座位エクササイズ

→ 下肢体性感覚の信頼性を下げ、前庭感覚の活性化を誘導

これらは、どの感覚を使わせたいのかという意図を持って選ぶべきであり、例えば前庭系のリハにはGボールが有効である可能性があります。

臨床応用のポイント

  • 感覚入力の評価には、Romberg比フォームパッド上での動揺を活用
  • 感覚統合に着目すると、バランス能力だけでなく感覚の使い方そのものを変えられる
  • 「なんとなくバランス訓練」から、「何の感覚を鍛えるか」を意識したアプローチへ

 

おわりに

 感覚の再重みづけは、姿勢制御の柔軟性と適応性を支える鍵です。感覚入力の特性と使い方を理解すれば、より効果的なリハビリ個別性のある介入が実現できます。

 

ぜひ臨床に活用してみてください。最後までご覧いただきありがとうございました。

 

参考文献;感覚と姿勢制御のフィードバックシステム. バイオメカニズム学会誌. 第39巻第4号; 2015年:195-203.