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予後が読めるセラピストになる!被殻・視床出血の判断軸まとめ

 

 

 

 本日もご覧いただきありがとうございます。本日のテーマは被殻出血・視床出血の予後予測についてです。

 日常臨床において、脳出血患者の機能予後を早期に予測することは、リハビリテーションにおいて治療の立案や、ご家族様への説明、さらには多職種連携を行う上でも非常に重要な要素ではないでしょうか。

 

 特に、脳卒中の中でも高頻度でみられる被殻出血と視床出血では、出血量や解剖学的位置の違いから、予後の経過にも明らかな差が生じることがあります。

 今回は、被殻出血・視床出血における予後規定因子に関する2つの研究をもとに、現場で活かせる知見をまとめてみました。

 

 

 

★ 血腫量と機能予後の関係

 まず注目すべきは、出血量が予後に与える影響です。被殻出血では、血腫量が約18ml以下であればADLがほぼ自立に近い水準まで回復する可能性が示されています。一方で、80mlを超えると死亡率が極めて高くなるといわれています。

 

 対して視床出血では、わずか3ml程度の出血であってもADLの大幅な制限が残るケースがあり、10mlを超えると寝たきりや死亡に至る例が多いといわれています。つまり、視床出血では少量でも予後が厳しいという認識を持って対応する必要があります。

 

★年齢の影響と高齢者における留意点

 次に、年齢の影響についてですが、どちらの出血タイプでも若年者ほど予後が良好であり、加齢に伴い回復が限定される傾向があるといわれています。とりわけ、60歳を超えるあたりから機能的な回復の幅が狭まり、80歳代では機能的に自立する例はごくわずかであるといわれています。

 

 また、高齢者では出血量と予後の相関が弱くなるとされており、これは、非麻痺側の筋力低下や整形外科的な併存症、あるいは病前のADL水準の低下が影響していると思われます。高齢患者では、画像所見だけで予後を判断せず、全身機能や既往歴を加味した総合的な評価が求められます。

 

★ CT分類と脳室穿破の重要性

 CT分類による予後予測も非常に重要です。

🧠 被殻出血のCT分類(Putaminal hemorrhage)

種類(Type) 説明(Description)
1. 局在型(P1) 血腫は被殻内に局在、もしくは球状に拡大しながらも、中心は発生部位にとどまる。血腫の直径は3cm未満。
2. 被殻・内包型(P2a) 血腫の直径が3cmを超え、前後方向に拡大。内包後脚が部分的に巻き込まれる。
3. 進展型(P2b) 被殻の構造が完全に破壊され、血腫が放線冠から中心半楕円中心を経て、側頭葉峡部を通って側頭白質後部へ広がるか、または脳室系へ破れて流入
4. 脳室型(P3) 血腫が脳室系の大部分を占め、特に第3脳室が閉塞されている。

 

 被殻出血ではP1分類の症例は予後良好であり、P2aでは年齢によって分かれ、P2bやP3になるとほぼ致死的な経過をたどります。

 

🧠 視床出血のCT分類(Thalamic hemorrhage)

種類(Type) 説明(Description)
1. 局在型(T1) 血腫が外側または内側の視床核に局在し、小さな楕円形で中心が発生部位にとどまる。
2. 視床・内包型(T2a) 血腫が外側に拡大し、内包に接触または侵入する。
3. 視床下部・中脳型(T2b) 血腫が視床下部および中脳に向かって下内側へ広がる。
4. 脳室型(T3) 大きな血腫が周囲の構造および脳室系、特に第3脳室にまで及ぶ。

  

 視床出血も同様に、T1が比較的良好、T2以降は厳しい経過となります。

 

 また、脳室穿破の有無は予後を左右する最大の要素の一つである。被殻出血では25ml、視床出血では4mlを超える出血で脳室穿破のリスクが高まり、穿破例では自立レベルのADLに到達した症例は極めて少ないとされています。

 

 

 

★ 意識レベルの推移から見る回復可能性

 発症から3日目までの意識レベルの変化が予後に密接に関係しており、被殻出血では、たとえ入院時に意識障害があっても、3日以内に改善傾向があれば機能回復が見込めるといえます。一方で、同期間に意識が悪化した場合は、ほとんどが死亡または寝たきりに至っています。

 このことから、急性期における意識レベルのモニタリングは、リハビリ介入の時期や目標設定に大きな手がかりを与えています。

 

 

まとめ

- 出血量と年齢は、予後を大きく左右する基本的な指標。
- CT分類や脳室穿破の有無も重要なリスク判断材料。
- 意識レベルの経過観察は、急性期のリスク層別化に活用できる。
- 高齢者では画像所見に加え、非麻痺側機能や病前ADLなど、より包括的な評価が必要。

 

 

 日々のリハビリ評価・介入計画の精度を高めるためには、こうした複数の因子を組み合わせた総合的な予後予測の視点を持つことが求められるでしょう。

 

 

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

参考文献被殻出血における血腫量は機能予後の予測因子となりうるか  菊谷明弘, 皆方伸, 佐藤雄 2014

被殻出血および視床出血の予後に関する研究―予後規定因子等の比較検討―若杉洋1987