本日もご覧いただきありがとうございます。本日のテーマは心リハで必要となる運動負荷の評価と、運動処方の基本についてです。
ぜひ参考にしてみてください。
🔹1. 運動負荷の評価方法
評価法 | 説明 | 特徴・活用場面 |
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6分間歩行試験(6MWT) | 6分間で歩ける距離を測定 | 心肺機能・ADLレベルの全体把握に有効 |
Borgスケール | 自覚的運動強度(6〜20点) | 主観的負荷を可視化。12〜13が適度 |
Karvonen法 | (220−年齢)×運動強度% + 安静時HR | 個別に心拍数から目標HRを算出できる |
トークテスト | 会話できる範囲の運動強度 | 簡便・安全。AT以下の目安として活用 |
簡易心拍数処方 | (最大心拍数×60〜70%)程度を目標 | 心疾患患者はこの範囲が推奨されることが多い |
2.📚Karvonen法に基づく運動負荷と自律神経の反応
心拍数を基に運動強度を設定するKarvonen法を用いて、運動中および運動後の自律神経活動(交感・副交感)の変化を検討した研究(正保ら, 2011)では、以下のような知見が得られました。
✅ 研究の概要
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対象:運動習慣のない健常男性11名
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方法:背臥位での自転車エルゴ運動をKarvonen法に基づき80%・40%の負荷強度で実施
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指標:自律神経活動(HFnu=副交感神経/LF/HF=交感神経)と運動後の心拍数回復(T30)
🔍 主な結果
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80%の負荷では、副交感神経活動は有意に低下し、交感神経活動が顕著に亢進
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40%の負荷では、自律神経の変動は少なく、運動後には副交感神経の回復傾向がみられた
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心拍数の回復速度(T30)は40%の負荷の方がやや遅いが、交感神経の過度な興奮は回避できる
💡 結論と臨床的意義
背臥位での低強度(40%程度)の運動は、自律神経への過剰な負担が少なく、心疾患や低体力高齢者への安全な運動療法として有効である可能性が示唆されました。
特に、交感神経優位となりやすい急性期の心不全患者においては、AT以下の運動強度が望ましいというガイドラインと本研究の結果は一致しており、臨床での運動処方にも活かすことができます。
🔹3. 心負荷試験・AT(無酸素性作業閾値)について
📌目安:最大酸素摂取量(VO₂max)の約60%前後
🔹4. 心疾患患者に配慮すべきポイント
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心疾患の方は、
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交感神経活動が亢進しやすい
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迷走神経活性(副交感神経)が低下しやすい
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そのため、AT以下の軽〜中等度の運動負荷が安全で効果的!
🔹5. 運動前後でチェックすべき指標
評価項目 | 意味・注意点 |
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自覚症状(息切れ、倦怠感、胸部不快感など) | 負荷が過剰でないかの主観的指標 |
体重 | 急激な増減は心不全悪化のサイン(浮腫や水分貯留) |
BNP値(脳性ナトリウム利尿ペプチド) | 心負荷の客観的指標。高値なら運動強度を再検討 |
✍️まとめ
心疾患患者への運動処方では、「安全・効果・継続」を意識した評価とアプローチがカギ。AT以下の運動負荷を目安に、主観+客観の両面からしっかり評価を行うことが重要です。
本日もご覧いただきありがとうございました。明日からの臨床に少しでも役立てていただけると嬉しいです!
参考文献;Karvonen法による運動負荷強度における生体反応 正保 哲 2011