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【臨床で活かす】体幹前傾動作と筋活動の理解 〜腸腰筋・ハムストリングス・腹筋の連動に着目〜

 

 

はじめに

 体幹を前傾させる動作は、日常生活動作やリハビリにおいて非常に重要な基本運動です。
しかし、患者が「うまく前に倒れない」「腰が丸まる」「膝が曲がる」といった問題を抱えることは多く、原因は単純な柔軟性低下にとどまりません。
今回は、体幹前傾と筋活動の関係性に着目し、臨床で活かせるポイントをまとめました。

 

1. 前傾運動に必要な筋活動

ハムストリングス(内・外側)

  • 体幹を前傾させる際、骨盤の前傾を伴いますが、ハムストリングスが硬くなっていると骨盤が後傾しやすくなり、代償的な動きが出ます。

  • 特に膝が軽度屈曲していると、ハムの活動が高まり、体幹前傾を制限します。

ヒューマン・アナトミー・アトラス2025より 半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋長頭、大腿二頭筋短短頭



腸腰筋

  • 骨盤前傾を誘導する主力筋。

  • 筋トーンが低下すると、腹部の屈曲姿勢を取ることで代償し、骨盤後傾と脊柱の後湾が生じやすくなります。

 

ヒューマン・アナトミー・アトラス 2025より 腸腰筋

 

2. 臨床でよく見る姿勢パターン

  • 腹筋が優位で腸腰筋の活動が不十分な場合、腹直筋での代償的な前傾が見られる
    → 骨盤が後傾し、膝関節が屈曲して体重支持が不安定になる

  • 足部底屈筋群のトーン上昇があると、踵が浮きやすく下腿が後傾
    → 結果として体幹前傾が困難になり、足底荷重も不安定になる

 

3. 治療戦略

 筋の再教育とストレッチを組み合わせることが鍵

腸腰筋の促通

  • 腸腰筋の収縮を意識した運動(立位・端座位)

  • 腸腰筋の付着部(腰椎前面や小転子)をイメージさせる

  • 大腿直筋の活動が代償的に高まるため、分離運動を意識

ハムストリングスの抑制

  • ダイレクトストレッチ(膝屈曲位 → 伸展位)

  • 特に立位や端座位での骨盤前傾運動中に、ハムストリングスの柔軟性を引き出す

✅ 足部アプローチ

  • 足部底屈筋群のtoneが高い場合は、アキレス腱部に対し横断的にストレッチを行い、足背屈を促す

  • 膝伸展位での持続的背屈位維持訓練も有効

 

4. 臨床で使えるエクササイズ例

  • 端座位での骨盤前傾→起立動作
     → 90°股関節屈曲位から前傾を促すことで腸腰筋を意識

  • 足底荷重の調整
     → ヒラメ筋トーンが高い場合、立位前傾がしづらいため、下腿前傾を誘導

 

まとめ

 体幹の前傾動作は、「腸腰筋の収縮」「ハムストリングスの柔軟性」「足部の安定性」という3つの要素がバランス良く働いて初めて獲得できます。
単なる柔軟性や筋力強化だけでなく、動作戦略と姿勢調整を意識した介入が、リハビリの質を高めるカギになります。

 

 

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