はじめに
体幹を前傾させる動作は、日常生活動作やリハビリにおいて非常に重要な基本運動です。
しかし、患者が「うまく前に倒れない」「腰が丸まる」「膝が曲がる」といった問題を抱えることは多く、原因は単純な柔軟性低下にとどまりません。
今回は、体幹前傾と筋活動の関係性に着目し、臨床で活かせるポイントをまとめました。
1. 前傾運動に必要な筋活動
① ハムストリングス(内・外側)
② 腸腰筋
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骨盤前傾を誘導する主力筋。
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筋トーンが低下すると、腹部の屈曲姿勢を取ることで代償し、骨盤後傾と脊柱の後湾が生じやすくなります。
2. 臨床でよく見る姿勢パターン
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腹筋が優位で腸腰筋の活動が不十分な場合、腹直筋での代償的な前傾が見られる
→ 骨盤が後傾し、膝関節が屈曲して体重支持が不安定になる -
足部底屈筋群のトーン上昇があると、踵が浮きやすく下腿が後傾
→ 結果として体幹前傾が困難になり、足底荷重も不安定になる
3. 治療戦略
筋の再教育とストレッチを組み合わせることが鍵
✅ 腸腰筋の促通
✅ ハムストリングスの抑制
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ダイレクトストレッチ(膝屈曲位 → 伸展位)
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特に立位や端座位での骨盤前傾運動中に、ハムストリングスの柔軟性を引き出す
✅ 足部アプローチ
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足部底屈筋群のtoneが高い場合は、アキレス腱部に対し横断的にストレッチを行い、足背屈を促す
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膝伸展位での持続的背屈位維持訓練も有効
4. 臨床で使えるエクササイズ例
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端座位での骨盤前傾→起立動作
→ 90°股関節屈曲位から前傾を促すことで腸腰筋を意識 -
足底荷重の調整
→ ヒラメ筋トーンが高い場合、立位前傾がしづらいため、下腿前傾を誘導
まとめ
体幹の前傾動作は、「腸腰筋の収縮」「ハムストリングスの柔軟性」「足部の安定性」という3つの要素がバランス良く働いて初めて獲得できます。
単なる柔軟性や筋力強化だけでなく、動作戦略と姿勢調整を意識した介入が、リハビリの質を高めるカギになります。
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