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今回は、脳卒中リハビリで注目されている学習戦略の視点にフォーカスしていきます。
脳卒中患者の運動障害に対するリハビリテーションでは、単に筋力を回復させるだけでなく、「運動を学び直す」視点が極めて重要です。近年、神経可塑性に関する研究が進展しており、「機能回復=運動学習のプロセス」とする考え方が臨床にも広まりつつあります。
本記事では、2つの論文に基づき、脳卒中後の運動機能回復を最大化するための介入方略について解説します。
★運動学習は“再学習”のプロセスである
脳卒中によって失われた運動機能は、可塑的変化を通して再構築されることが知られています。これは“使用依存的再構築(use-dependent reorganization)”と呼ばれ、繰り返し使用される動作に関連した皮質領域が再び活性化・強化されていくプロセスです。
したがって、非麻痺側の過剰使用による「学習された不使用(learned non-use)」を避け、麻痺側の活用を促す介入が重要になります。
★課題指向型アプローチと環境設定の重要性
Bernsteinのシステム理論に基づく「課題指向型アプローチ(task-oriented approach)」では、実際の生活に即した運動課題を反復することにより、複雑な神経系の協調が生まれ、機能的動作が再獲得されるとされます。
このアプローチでは以下のような戦略が効果的です。
◎実用的な課題に基づくトレーニング(例:立ち上がり、歩行)
◎変化に富んだ環境設定での反復練習
◎視覚・聴覚によるフィードバックと段階的な課題修正
また、運動スキルは「フォーム×正確さ×速さ×適応性」という4要素で構成され、これらをバランスよく高めることが求められます。
★MRP(Motor Relearning Program)の実践的活用
Carr & Shepherdが提唱した「運動再学習プログラム(MRP)」は、脳卒中後の運動機能回復を支援する体系的なモデルです。MRPでは以下の4ステップが提案されています。