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【保存版】新人セラピストのための「小脳」入門〜構造・接続・機能の全体像〜

 

 

 本日もご覧いただきありがとうございます。本日のテーマは若手セラピスト向けに小脳について考えていきます。小脳=運動の調整のイメージがあるかと思います。しかし、それだけではないんです。

 最近の研究では、小脳が感情・言語・記憶・注意力にも関わっていることがわかってきました。
つまり、小脳の理解は「動作」だけでなく、「その人らしさ」を支えるうえでも重要なカギになるんです。

たとえば、
✔️動きは改善しているのに、リハ中の集中力が続かない
✔️感情のコントロールが難しく、うまく関わりづらい
そんな場面に出会ったことはありませんか?

 

 本記事では、小脳の【構造・つながり・役割】を新人セラピストでもわかるようにやさしく解説します。

🧠【小脳を知る】

運動だけじゃない「小脳」の解剖学的な基礎知識

 

 「小脳(cerebellum)」は、後頭蓋窩に位置し、左右の大脳半球の下、脳幹の背側に接しています。その名前のとおり「小さな脳」を意味しますが、ニューロンの数は大脳皮質全体よりも多く、人間の高度な運動制御や認知機能を陰で支える重要な中枢です。

 

 

🔹 小脳の基本構造

小脳は大きく3つの部分に分けられます:

  1. 小脳半球(左右):運動の微調整や学習、認知機能にも関与

  2. 虫部(vermis)体幹・姿勢制御に関わり、情動機能にも関連

  3. 小脳葉(lobules):小脳はI〜Xの10葉に分類され、前葉(I〜V葉)、後葉(VI〜IX葉)、そして最も後方の第X葉(片葉=flocculonodular lobe)に分けられます。

 

🔹 小脳の機能的区分:3つの系統

系統名 主な構造 役割
前庭小脳(古小脳) 第X葉(片葉・結節) 平衡感覚・眼球運動
脊髄小脳(旧小脳) 虫部・中間部(前葉VIあたり) 姿勢制御・体幹運動の調整
大脳小脳(新小脳) 小脳外側部(Crus I/IIなど) 手指の精密運動、言語、認知

 

🔹 小脳皮質の層構造とニューロン

小脳皮質は以下の3層構造から成ります:

  1. 分子層:主に樹状突起と軸索が集まる神経活動のネットワークゾーン

  2. プルキンエ細胞小脳唯一の出力細胞であるプルキンエ細胞が並ぶ

  3. 顆粒層:顆粒細胞が密集し、苔状線維とシナプスを形成

 小脳への入力は登上線維(オリーブ核由来)苔状線維(脊髄・橋核由来)があり、それらが小脳皮質で情報を処理したのち、プルキンエ細胞を通じて小脳核へ出力されます。

 

🔹 小脳核とその役割

 小脳皮質の内側には深部小脳核(dentate, emboliform, globose, fastigial)があり、ここが最終的な情報出力のハブになります。

  • 歯状核(dentate):大脳とのループ形成。運動・認知に関与

  • 中位核(interposed nucleus:emboliform+globose):四肢の運動制御

  • 室頂核(fastigial)体幹、姿勢、眼球運動、情動機能

🔹 小脳の接続:どこから来てどこへ出るか?

  • 入力経路:橋核(大脳皮質からの情報)、脊髄、前庭神経核など

  • 出力経路:小脳核 → 上小脳脚視床 → 大脳皮質(特に前頭葉

この経路により、小脳は運動の予測・調整だけでなく、遂行機能や感情制御にも関与していることが近年の研究で明らかになっています。

 

 次回の記事では、小脳の損傷で生じる「小脳性認知情動症候群(CCAS)」について、臨床での見分け方やリハビリの実践例をご紹介します。

 

本日はここまでとなります。ご覧いただきありがとうございました。