✅【保存版】変形性股関節症に対する運動療法まとめ
本日もご覧いただきありがとうございます。以前に続き変形性股関節症に対する運動療法についてまとめていきます。
股OAのリハでは「疼痛軽減・機能改善・QOL向上」の3点を軸にした運動療法が重要であり、エビデンスと臨床応用をセットで押さえておきましょう!
🔬【科学的根拠】
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Ottawa Panelのレビューでは、筋力強化、柔軟性運動、有酸素運動の3本柱が有効と明言されています。特に今回は、実際の「中殿筋・大殿筋・腸腰筋」へのアプローチを紹介します。
🏋️♀️【筋力強化エクササイズ】
① 中殿筋(外転)
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サイドレッグレイズ(側臥位):骨盤の傾きに注意
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クラムシェル(側臥位・膝屈曲):代償防止に腹圧も意識
・立位でのアブダクション;左右の骨盤での代償に注意
② 大殿筋(伸展・外旋)
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ヒップエクステンション(四つ這い or 立位)
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ブリッジ:背中を反らさずお尻で持ち上げる
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ヒップスラスト:骨盤の前傾・後傾に注意
③ 腸腰筋(屈曲)
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ヒップフレクション(仰臥位)
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マーチング(立位 or 仰臥位):骨盤を安定させる
🧘♀️【柔軟性向上ストレッチ】
方向 | 肢位 | 主な筋 | 注意点 |
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股関節屈曲 | 仰臥位で膝を胸へ | 大殿筋、ハム | 骨盤後傾を避ける |
股関節伸展 | 立位でランジ姿勢 | 腸腰筋、大腿直筋 | 骨盤前傾を意識 |
外転 | 片脚に荷重 | 内転筋群 | 体幹が倒れないように |
内転 | あぐら姿勢 | 中殿筋、小殿筋 | 背筋を伸ばす |
内旋 | 仰臥で脚交差 | 外旋筋(梨状筋) | 腰をひねらない |
外旋 | 足を膝上にのせる | 内旋筋 | 骨盤を立てる意識 |
※ 各ストレッチ:30〜45秒×1〜3セット
📝【実施のコツ】
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週3回以上・8〜24週間が効果的(RCTより)
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痛みや可動域の変化を定期的に評価し個別化した治療プラン立案を
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患者教育とモチベーション維持が重要
🧩【症例設定】
※架空の人物を想定しています。
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年齢・性別:72歳・女性
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診断名:右変形性股関節症(Kellgren-Lawrence grade 3)
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主訴:「右股関節が歩くと痛い。長く歩けない」
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既往歴:高血圧・骨粗鬆症あり。杖使用。手術希望なし。
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現状:
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立脚初期から中期にかけての右股関節外側痛
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10分以上の歩行で跛行顕著、Trendelenburg徴候あり
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股関節の屈曲/伸展/外転に可動域制限あり(疼痛により最終域近くで制限)
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大殿筋・中殿筋の筋力低下(MMT3)
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立位時の骨盤側方偏位・体幹の右傾斜傾向あり
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🔍【臨床推論と仮説】
◆ 仮説1:立脚中期の骨盤安定性の破綻 → 中殿筋機能不全
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痛みの回避により中殿筋活動が抑制され、Trendelenburg徴候(患側に体幹が倒れる)出現。
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股関節外転モーメントの不足 → 関節内圧増加 → 疼痛持続
→ 🧪検証:荷重位での中殿筋の収縮確認(片脚立位・トレンドレンブルグテスト)
◆ 仮説2:股関節伸展モーメントの低下による立脚終期の推進力低下
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大殿筋機能不全が補償的な体幹伸展代償を誘発し、腰痛や歩行の非効率性を引き起こす
→ 🧪検証:ヒップエクステンション時に腰椎過伸展が出現するか確認
◆ 仮説3:腸腰筋の柔軟性低下 → 骨盤前傾抑制 & 可動域制限
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伸展可動域制限により歩行時の後方推進力や蹴り出しが減少
→ 🧪検証:トーマステストによる腸腰筋短縮の有無評価
💡【治療方針(介入の優先順位)】
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荷重下での中殿筋活性化訓練(動的安定性の再構築)
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非荷重下での大殿筋再教育(選択的収縮からの強化)
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腸腰筋ストレッチと股関節伸展可動域改善
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股関節周囲筋の協調的トレーニング(多関節・機能的運動へ)
🏋️♀️【運動処方例(初期3週間)】
🔸Phase1:疼痛コントロール&低負荷運動
目標 | 中殿筋・大殿筋・腸腰筋の再教育、疼痛の軽減 |
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介入 | - 側臥位クラムシェル(骨盤固定) |
- 四つ這いヒップエクステンション | |
- 仰臥位マーチング(体幹固定下での股関節屈曲) | |
- トーマステスト肢位での腸腰筋伸張 (20秒×3) |
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注意点 | 疼痛誘発しない範囲、骨盤の回旋代償を抑える |
🔸Phase2(4週以降):荷重課題の導入と機能改善
目標 | 荷重下での股関節安定性、歩行機能の向上 |
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介入 | - 立位アブダクション(壁やチューブ使用) |
- ラテラルステップ(中殿筋荷重制御) | |
- ブリッジ+大殿筋収縮意識 | |
- ランジポジションでの腸腰筋動的ストレッチ | |
- サイクリング(非荷重有酸素) | |
注意点 | トレーニング後の痛み・跛行の増悪をモニターし強度調整 |
📊【評価と進行管理】
項目 | 評価指標 |
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疼痛 |
NRS・WOMAC pain項目 |
筋力 | MMT・徒手筋力計 |
歩行 | 歩行距離・跛行観察 |
機能 | TUG・30秒椅子立ち上がりテスト |
【まとめ】
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単なる筋力強化ではなく、「股関節の安定に対する仮説」→「運動処方」→「フィードバック」の繰り返しが治療成功のカギとなります。
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「筋活動パターンの再構築」と「関節への荷重ストレスコントロール」を両立させるプログラムが重要です。
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「代償動作の抑制」→「正しい動作パターン」が疼痛軽減と機能改善の両立につながると考えます。
本日はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました。