本日もご覧いただきありがとうございます。本日のテーマは反張膝に対する介入戦略についてです。
1. 反張膝とは?
反張膝(knee hyperextension)は、立脚中期~後期に膝関節が生理的伸展範囲を超えて過伸展する現象であり、歩行効率・安定性の低下のみならず、慢性的な関節障害の原因となることがあります。
🔹生じやすい背景:
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脳卒中や脳性麻痺などの中枢神経障害
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ACL損傷後の代償動作
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足関節背屈制限を伴う高齢者のOA
🔹臨床での問題点:
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靭帯・関節包の過剰な伸張ストレス
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膝痛やOA進行リスク
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立脚中期に必要な前方推進トルクの破綻
2. 足関節-膝関節の連鎖的関係とは?
反張膝の多くは膝関節単独の問題ではなく、足関節の可動域・筋緊張・接地戦略が密接に関係しています。
🔸足関節背屈制限 → 膝過伸展の誘発
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背屈制限があると、脛骨の前方移動が阻害され、代償的に膝関節の後方移動(過伸展)が起こりやすくなります。
🔸足部アライメントの影響
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過回内により脛骨内旋が強まり、膝関節の安定性を損なう
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初期接地が前足部優位となると、床反力ベクトルが膝後方を通り、反張膝が助長される
🔸下腿三頭筋の緊張亢進
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特にヒラメ筋の短縮・痙縮は、背屈制限を生み、立脚後期の過剰な底屈トルクを介して膝を後方に押し出す
3. 評価ステップチェックリスト
✅静的評価
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足関節背屈ROM(膝伸展位での評価が重要)
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膝伸展位での関節安定性(過伸展角度)
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アキレス腱・ヒラメ筋の伸張性
✅動的評価
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歩行中の立脚中期での脛骨前方移動の有無
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床反力ベクトル(GRF)が膝関節の前方か後方か
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初期接地パターン(ヒールストライク vs フォアフット)
✅筋機能評価
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前脛骨筋・大腿四頭筋の収縮タイミング
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ハムストリングス・腓腹筋の伸張・反応性
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体幹前傾保持と骨盤制御(代償動作の有無)
4. 反張膝に対する介入戦略
✅足関節アプローチ
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ヒラメ筋・アキレス腱のストレッチ
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関節モビライゼーション(距腿関節の背屈可動性改善)
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AFO(足継手付き)による背屈角度の調整
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背屈角度0°〜5°に設定することで、脛骨の前方倒れを促進し、床反力ベクトルが膝関節中心に近づく
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膝後方への過剰なトルクを制御可能
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✅膝関節アプローチ
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ハムストリングスの促通(股関節伸展と併用)
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大腿四頭筋の制動トレーニング(エキセントリックを意識したスクワット)
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立脚中期の安定化トレーニング(バランスディスク、斜面台での荷重練習)
5. AFO活用の実際と臨床例
🎯背屈角度設定の考え方
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AFO背屈角度0°設定:中等度の反張膝に対して有効
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背屈角度5°設定:強い反張傾向や背屈ROM制限が顕著な場合に有効
🧑⚕️臨床例①:60代・片麻痺例
問題点:
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立脚中期の脛骨前方移動なし
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足関節背屈制限(10°以下)
介入: -
AFOを背屈5°に設定
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歩行訓練+ヒラメ筋ストレッチ+大腿四頭筋トレーニング
結果:
→GRFが膝関節中心に近づき、反張膝が軽減
🧑⚕️臨床例②:70代・OA例
問題点:
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ハムストリングス短縮+前足部優位接地
介入: -
ステップ練習(踵接地意識)+ハムストリングスの伸張
→姿勢と接地戦略の再構築により、膝安定性が改善
6. まとめ:反張膝は「膝」だけを診ない!
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原因の多くは 足関節由来の連鎖的影響 にあり
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AFOによる背屈設定は、歩行中の床反力の変化を通じて動的に反張膝を制御できる有効な戦略
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「足部・膝関節・筋機能・動作パターン」を包括的に評価・介入していくことが、明日の臨床に直結する鍵となる
本日の内容はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました。