本日もご覧いただきありがとうございます。本日のテーマは膝関節への進入法についてです。
膝の術後リハビリを担当する中で、「この方の可動域制限や筋力低下は、術式と関係があるのでは」と感じることはありませんか?
特に進入法の違いは、術後の回復過程に少なからず影響を与えるように思います。
本記事では、代表的な膝関節の進入法について、その特徴や臨床上の留意点を簡潔にまとめました。
日々の評価や介入の一助となれば幸いです。
人工膝関節置換術(TKA)などの整形外科的手術において、膝関節への進入法(surgical approach)は、術後の可動域回復・痛み・安定性に大きく関与します。今回は、臨床でよく使われる3つの進入法について、それぞれの特徴と選択のポイントを解説します。
① Medial Parapatellar Approach(内側膝蓋傍進入法)
特徴:最も標準的な進入法。展開性が高く、術野が広く得られる。
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切開部位:大腿四頭筋腱の内側1/3および内側広筋との筋腱移行部を切開
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適応:初回TKA、再置換例など視野が求められる症例
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メリット:展開が良く、手術操作がしやすい
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デメリット:大腿四頭筋腱の損傷により、術後の伸展機構の回復が遅れる場合がある
② Midvastus Approach(中広筋進入法)
特徴:術野の確保と筋損傷の軽減を両立させた中間的アプローチ。
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切開部位:内側広筋の斜走線維とその膝蓋骨内側付着部
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適応:筋温存を図りつつも、ある程度の展開性が求められる症例
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メリット:大腿四頭筋腱は温存でき、術後の筋力低下を軽減
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デメリット:展開はparapatellar法より劣るが、subvastusより良好
③ Subvastus Approach(広筋下進入法)
特徴:最も侵襲の少ないアプローチ。筋温存が可能。
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切開部位:膝蓋骨内縁から、内側広筋の下縁を展開
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適応:低侵襲を重視する症例、若年者、筋力保持が重要なケース
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メリット:内側広筋を完全温存でき、膝関節伸展機構の損傷を回避
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デメリット:展開性がやや劣り、肥満例や拘縮例では難易度が上がる
臨床での活かし方:
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術後のリハビリ評価で重要な視点:
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伸展遅延の有無(→parapatellarでは出やすい)
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筋出力低下の程度(→筋損傷の少ないsubvastusでは軽度)
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可動域制限のパターン(→進入法による滑走障害も考慮)
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回復経過の予測に:
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術式を把握することで、「どの筋が侵襲されたか」をもとに介入プログラムを立案可能
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まとめ
進入法 | 展開性 | 筋温存 | 特徴 |
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Medial Parapatellar | ◎ | △ | 最も標準的、術野が広い |
Midvastus | ○ | ○ | 中間的、バランス型 |
Subvastus | △ | ◎ | 低侵襲、筋温存重視 |
🔖Tips:
リハビリ開始時は、術式の確認を習慣化することで、早期に適切な荷重・可動域訓練のタイミングを判断しやすくなります。
※医師の指示のもとリハビリテーションを。
本日は以上となります。最後までご覧いただきありがとうございました。