本日もご覧いただきありがとうございました。本日のテーマは関節可動域制限のメカニズムと臨床における介入戦略についてです。
1.膝関節における屈曲制限の構造的要因と治療戦略
膝関節の可動域制限(特に屈曲制限)は、支持組織の線維化・癒着、関節内滑走性の低下など、複数の要因が絡み合って発生します。特に術後・長期不動例では、以下の3要素を押さえることが臨床では重要です。
① 膝蓋骨上方支持組織の癒着(膝蓋上嚢)
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問題点:膝屈曲時に膝蓋骨が大腿骨遠位に滑走できず、可動域が制限される。
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治療戦略:
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膝蓋骨モビライゼーション(近位・遠位方向への滑走回復)
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軽度屈曲位での膝蓋上嚢ストレッチ
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超音波や温熱療法による組織柔軟化の補助
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② 関節内の滑膜線維化・関節包の癒着
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問題点:関節包内の遊び(Joint Play)が失われ、軟部組織の滑走障害が生じる。
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治療戦略:
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関節モビライゼーション(特に内外側・回旋方向)
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炎症の早期管理と滑走運動の導入
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静的保持+荷重刺激の併用
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③ 膝蓋骨下方の支持組織(膝蓋靭帯・脂肪体)の拘縮
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問題点:屈曲後半に滑走が阻害され、疼痛や運動制限を招く。
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治療戦略:
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膝蓋下脂肪体の軟部組織リリース(徒手療法+超音波)
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エコー下での可動性評価と滑走訓練
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モビライゼーションと併せた筋膜スライドテクニック
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🔹 拘縮肩に対する解剖学的要因と治療戦略
◆ 拘縮肩で短縮・癒着しやすい構造
| 組織 | 解剖的位置 | 機能 | 治療戦略 |
|---|---|---|---|
| 烏口上腕靭帯 | 烏口突起〜小結節〜大結節 | 肩前方の安定性 | 肩関節伸展位での内外旋運動で滑走性回復 |
| 腱板疎部(rotator interval) | 棘上筋と肩甲下筋の間 | 前上方安定化 | 関節包の柔軟性確保が必須 |
| 下関節上腕靭帯(IGHL)含む関節包 | 関節前下方部 | 外転・外旋制限に関与 | 滑車などを用いた持続的伸張が有効 |
🔹 アセスメントの視点
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肩甲骨に対する上腕骨頭の位置関係を常に評価(Joint Centration)
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体幹に対する肩甲骨の位置も観察
→ 固有関節位置感覚・運動学的協調性の欠如が原因になることも
✅滑走性障害をどう捉え、どう動かすか
| 関節 | 主な障害部位 | 治療の核心 |
|---|---|---|
| 膝関節 | 膝蓋上嚢・関節包・脂肪体 | 可動性+滑走性の回復 |
| 肩関節 | 滑液包(肩峰下中心) | 外旋+伸展内転操作、牽引+固定 |
| 拘縮肩 | 烏口上腕靭帯、腱板疎部、IGHL | 滑走性アプローチと持続伸張の併用 |
このように、「滑走性」への理解と操作技術は、徒手療法の質を大きく左右します。機能解剖の再確認と、関節構成体の動態把握をベースに、過不足ない愛護的アプローチを展開することが、制限改善への近道となります。
✅臨床の視点から
- 滑液包の癒着は、滑走性低下+疼痛+可動域制限が出現
- 肩甲骨を固定した上での外旋位+伸展・内転誘導が治療の鍵
- 拘縮肩では靭帯や関節包の線維化・癒着を段階的に解放
- モビライゼーションに加え、ポジショニング・PNF・滑車練習など多角的アプローチが有効
本日はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました。