@pt.リハビリnote

臨床の気になること、疑問に思った事を深掘りしていきます🌸

【股関節内転筋・外転筋の力学的理解】

 

【股関節内転筋・外転筋の力学的理解】

~杖の使い方で筋負荷が変わる?歩行中の力学を可視化する~

 

🦵はじめに

 股関節の力学的理解は、歩行や起立時の筋活動を予測し、リハビリテーションの介入方針を考える上で非常に重要です。
 今回は「Pauwelsの理論」に基づいて、立位・歩行中の股関節外転筋の負荷と、杖の活用による負荷軽減のメカニズムを解説します。

 

📐Pauwelsの理論とは?

 立位中、股関節には体重の約5倍の力がかかると言われています。
これは「股関節外転筋が骨頭を支持するために、体重以上の筋力を発揮しなければならない」ことを示しています。

▶ 力のモーメント関係

  • 身体重心が股関節の外側にある

  • 対して、股関節外転筋(中殿筋など)は内側で働く

➡ したがって、外転筋の力は、体重の2.5倍~3倍が必要になる(a:b = 2:1)

 

🩼杖使用時の力学的変化

 歩行中、健側(痛くない方)に杖を持つことで以下のような効果があります:

✔ 股関節外転筋の負荷が減る理由

  • 杖を地面に押し付けることで反対側からの支持力(反力)が発生

  • これにより、股関節外転筋が担うべき力の一部を杖が代替してくれる

  • たとえば、5kgの力で杖を押すと、5kg×距離分の反力モーメントが生まれ、中殿筋の活動が軽減

👉 杖の効果は「てこの原理」で説明可能
 股関節中心を支点として、杖の接地位置が遠くなるほど、少ない力で大きな支えを得ることができます。

 

🧠臨床応用:なぜ杖は“健側”で持つのが良いのか?

  • 患側で杖を持つと、荷重を増やす方向に働いてしまう

  • 健側に持つことで、骨盤の下制(Trendelenburg兆候)を防ぎ、反対側の中殿筋の負荷が減る

▶ 同じく「体幹の側屈」や「腰方形筋の過活動」などを伴っている場合は、体幹トレーニングも同時に組み合わせると効果的です。

 

🧬股関節内旋筋と外旋筋の整理

 以下は臨床的に知っておくべき内旋・外旋筋の一覧です。

🌀内旋筋(主に歩行中の立脚中期以降に活躍)

  • 小殿筋前部線維

  • 中殿筋前部線維

  • 大腿筋膜張筋(TFL)

  • 長内転筋

  • 恥骨筋

  • 縫工筋(補助的)

👉 歩行の立脚後期では、骨盤の回旋運動と連動して内旋筋の活動が重要

 

🔁外旋筋(歩行初期や片脚支持時の安定に寄与)

  • 大殿筋

  • 梨状筋

  • 上双子筋・下双子筋

  • 内閉鎖筋・外閉鎖筋

  • 大腿方形筋

👉 特に荷重側の大殿筋後部繊維+深層外旋筋群の安定性が歩行の安定感に直結する

 

🧩トレーニング応用のヒント

  • 中殿筋だけでなく、股関節内旋筋・外旋筋の評価とトレーニングが必須

  • 内転筋の深部線維(薄筋・大内転筋など)は、姿勢制御や片脚立位時の安定性に重要

  • ハムストリングスや内転筋との協調関係も念頭に置く

 

✅まとめ

  • Pauwelsの理論は、股関節外転筋の日常的な高負荷を数値的に理解する手がかりになる

  • 杖の使い方ひとつで筋活動量が激変することを、臨床指導の場面で伝えると効果的

  • 股関節周囲の内旋・外旋・内転筋の構造的理解とトレーニングをリンクさせることで、実用的な介入が可能になる

 

本日の内容はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました。