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離床前に必ずチェック!心エコーで読み解く5つのリスクとその見方

 

 

 心疾患のある患者さんを離床させるとき、あなたはどんな情報を頼りにしていますか?血圧やSpO₂の安定だけでなく、「心エコー」のレポートには、リスク管理に欠かせないたくさんのヒントが詰まっています。

 この記事では、臨床で見逃せない5つの心エコー所見とその意味について、わかりやすく整理しました。
「何を」「どこまで」見れば安全に離床できるのか──判断力をアップさせたいあなたに役立つ内容です。

 

1.LVEFでみる心不全のタイプと予後

 まず知っておきたいのが、LVEF(左室駆出率)です。
これは、心臓(左室)が1回の拍出でどれだけの血液を送り出せているかを示す指標。
正常な範囲はおよそ 55〜70% で、低下すると心不全のサインになります。

心不全はこのLVEFの数値によって、大きく2つに分かれます。

  • HFrEF(EF < 40%):収縮不全型。心臓の押し出す力が弱い。

  • HFpEF(EF ≧ 50%):拡張不全型。心臓がうまく広がらない。

 近年はHFpEFの患者さんが増えており、全心不全半数以上を占めるとも言われています。しかもこのHFpEF、LVEFが正常に見えるため見逃しやすく、治療も難しいのが特徴です。

 

 

 ある日本の研究(Miyagishimaら、2009)では、LVEFが40%未満の患者さんは再入院や死亡率が高いことが報告されています。

つまり、EFの低下=要注意サインとして離床前に必ず確認すべき項目のひとつなのです。

 

2.離床時に見ておきたい、心エコーの5つのポイント

(1)左室の収縮力を示すLVEF

  • 55〜70%:正常

  • 40〜50%:軽度低下。離床時は経過観察をしっかりと

  • 40%未満:収縮不全。血圧低下や心拍出不足に注意

 LVEFが40%を切っている場合、ポンプ機能が弱く、離床の負荷で循環が破綻するリスクがあります。
 起立性低血圧や息切れ、倦怠感などが出やすいので、血圧モニタリングや段階的な負荷設定が必要です。

 

(2)右心機能をみるTAPSE

 右室の収縮力をみる指標として「TAPSE」という数値があります。
これは、右室がどれだけしっかり動いているかを評価できる便利な項目です。

  • 17mm未満:右室機能低下の可能性あり

 右心機能が低下していると、肺循環の負担が増してSpO₂の低下や息切れを起こしやすくなります
 特に、呼吸器疾患や肺高血圧を合併しているケースでは、離床での酸素変動に注意が必要です。

 

(3)肺うっ血のサイン「B-line」

 心エコーだけでなく、肺エコーも合わせて確認できる時代になりました。
注目すべきは「B-line(ビーライン)」。これは肺水腫や間質性肺炎などで現れる、肺のうっ血サインです。

B-lineが多数見られる場合は、

  • 心不全によるうっ血

  • 肺炎などの病変

の可能性があります。

 離床によって呼吸状態が悪化する恐れもあるため、呼吸苦の原因把握や酸素投与の判断材料になります。

 

(4)心嚢液貯留があるときは要注意

 心嚢液(心臓を包む膜の中の水分)が10mm以上ある場合は、心タンポナーデ(心臓の圧迫)のリスクが出てきます。

この状態では、

  • 心拍出が急激に落ちる

  • 血圧が保てない
    など、重篤な循環不全を引き起こす可能性があるため、急な離床は禁忌です。

 循環器へのコンサルや、ドレナージ(排液処置)が優先される場面です。

 

(5)左房径・弁膜症の評価

  • LAD(左房径) > 40mm:慢性的な圧負荷の可能性

  • 僧帽弁逆流(MR)・大動脈弁狭窄(AS)中等度以上:血行動態が不安定になることも

 これらの異常がある場合は、

  • 体位変換で血圧が乱れる

  • 負荷に対して心拍出が追いつかない
    といったことが起こることがあります。

 

 リスクの高い方には、短時間・低強度の離床からスタートし、段階的に進める工夫が必要です。

 

まとめ|「数値の奥にあるリスク」を想像する

 心エコーレポートは、患者さんの心臓がどんな状態か、どんなストレスに弱いのかが詰まっています。

  • LVEFやTAPSEで心臓の強さを知る

  • B-lineで呼吸の余裕度を測る

  • 心嚢液や弁膜症で急変リスクを予測する

 

 このように、心エコーの読み取りができれば、離床の判断に一歩踏み込んだ安全管理が可能になります。離床前にぜひ一度、エコーレポートをじっくり見てみてください

 

本日の内容はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 

参考文献

  1. 日本循環器学会・日本心不全学会(2021)
     『急性・慢性心不全診療ガイドライン(2021年改訂版)』

  2. Miyagishima K, et al. (2009)
     “Long-term prognosis of chronic heart failure: reduced vs preserved left ventricular ejection fraction.” Circ J, 73(1): 92-99.

  3. Lang RM, et al. (2015)
     “Recommendations for Cardiac Chamber Quantification by Echocardiography in Adults: An Update from the ASE and EACVI.” J Am Soc Echocardiogr, 28(1): 1–39.

  4. Nagueh SF, et al. (2016)
     “Recommendations for the Evaluation of Left Ventricular Diastolic Function by Echocardiography.” Eur Heart J Cardiovasc Imaging, 17(12): 1321–1360.

  5. 永井利幸 編(2021)
     『心エコーハンドブック 改訂第3版』 中外医学社

  6. 大木崇(2015)
     『心エコーポケットノート』 アスリード出版

  7. 黒澤博身(2013)
     『全部見える循環器疾患』 成美堂出版