本日もご覧いただきありがとうございます。本日のテーマは腰椎椎間関節障害についてです。
腰痛は臨床で最も多く出会う症状のひとつです。その原因の一つとして「腰椎椎間関節障害」があります。特にスポーツ活動や日常生活での腰椎伸展・回旋動作により椎間関節へ負担が集中し、腰痛の引き金となるケースは少なくありません。
若手療法士にとって、解剖学的理解や病態メカニズムを整理した上で、評価と介入を体系的に行うことは臨床力を高める大きなステップになります。
この記事では、椎間関節障害の基本から臨床での評価、さらに「明日から使える60分介入プラン」までを整理して解説します。
1. 解剖と負担構造の理解
椎間関節は腰椎の後方に位置する小関節で、椎間板とともに脊柱の安定性を担います。
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荷重吸収
腰椎伸展時の主な荷重吸収組織が椎間関節です。特に立位では、脊柱にかかる荷重の約80%を分担するとされます。
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安定性への寄与
関節包からは多裂筋の深層線維が起始しており、筋の収縮が椎間関節の安定性を支えます。
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痛みの発生源
椎間関節周囲には侵害受容器や痛覚神経線維が豊富に分布し、炎症やストレスによって容易に腰痛の原因となります。
2. 好発部位と病態メカニズム
臨床で障害が最も多いのは L4/5間といわれています。
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椎間板変性
椎間板が変性すると荷重分散機能が低下し、代わりに椎間関節へ過剰な負担が集中します。
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関節運動の逸脱
正常な関節運動から逸脱すると、関節包に炎症やストレスが蓄積。特に伸展や回旋動作での負荷は大きく、スポーツ(ゴルフ、テニス)や日常の持ち上げ動作で悪化しやすいです。
3. 臨床での評価ポイント
症状特徴
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腰椎伸展で疼痛が増悪(「後ろに反ると痛い」)
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回旋動作や片脚立位で腰痛が出現
触診
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棘突起間〜椎間関節部位に圧痛
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局所的な硬さや腫脹を確認
関節可動性評価
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PA mobilization での局所痛誘発
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セグメントごとの伸展可動域の差を比較
関連因子評価
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多裂筋の機能低下(腰椎安定性の低下)
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股関節伸展可動域の制限(代償的に腰椎伸展が増大)
4. 明日から使える介入プラン(60分想定)
0〜10分:評価
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疼痛誘発テスト(伸展・回旋)
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セグメント別可動域チェック
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多裂筋・股関節周囲筋の評価
10〜25分:除痛+可動性改善
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椎間関節モビライゼーション(Grade I–II)で疼痛緩和
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股関節伸展可動域改善
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大腿直筋・腸腰筋ストレッチ(腰椎伸展を避ける)
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胸椎伸展可動性改善
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フォームローラー上で胸椎伸展運動
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25〜45分:安定化トレーニング
45〜55分:動作修正
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伸展・回旋を伴う動作の再学習
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荷物の持ち上げは股関節・胸椎で代償し、腰椎過伸展を回避
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ゴルフやテニス動作のフォーム修正(必要時)
55〜60分:ホームエクササイズ指導
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朝:多裂筋エクササイズ(四つ這いバードドッグ 5回×2セット)
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夜:腸腰筋ストレッチ(30秒×2回)
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日常:反り腰立位や反復後屈など、腰椎過伸展動作を避ける
まとめ
腰椎椎間関節障害は、腰椎伸展や回旋による荷重集中が主因となる腰痛の一つです。評価では疼痛誘発動作・触診・関節可動性に加え、多裂筋や股関節可動域など関連因子を見逃さないことが重要です。
介入では「除痛 → 可動性改善 → 安定化トレーニング → 動作修正 → ホームエクササイズ」という流れを意識すると臨床の質が安定します。若手療法士はまずこの流れを押さえ、ケースごとに応用を効かせられるようにしていきましょう。
腰椎椎間関節障害は「単なる腰痛」として片付けられがちですが、病態を正しく理解し、解剖・力学的背景に基づいた介入を行うことで再発予防や長期的な機能改善に繋げることができます。
本日の内容はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました。