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関節モビライゼーションで可動域を回復!痛みと不安定性の改善法

 

 

 本日もご覧いただきありがとうございます。本日のテーマは関節モビライゼーションに関する記事です。

 

1. はじめに

  • 関節運動における疼痛の原因として、関節包内運動の制限や不安定性が挙げられる。

  • これらの問題に対する治療法として、関節モビライゼーション、筋力トレーニング、テーピング、装具が有効であることを紹介。

  • 関節モビライゼーションの理論的背景と治療目標を説明。

2. 関節包内運動と疼痛の関係

  • 関節包内運動とは:関節の動きにおける滑りや転がり運動を含む微細な動作。

  • 過小可動性:関節包内運動が制限されることにより、関節の可動域が制限され、疼痛や運動制限が発生。

  • 過大可動性:関節が不安定になり、筋力トレーニングや安定性向上の必要性が増す。

3. 関節モビライゼーションの役割

  • 関節モビライゼーションの目的

    • 関節内液の循環促進

    • 関節包の伸張性の改善

    • 可動域制限の改善と疼痛緩和

  • モビライゼーションの技法

    • 関節の遊びに対して様々な強度、スピードで振幅運動を行う。

    • 凹凸の法則:関節面の滑りと転がりを促進し、正常な関節運動を回復させる。

4. 関節モビライゼーションの体系と手法

  • Kaltenbornの体系:関節面への離開や滑り運動の強さに基づき、モビライゼーションのGradeを3つに分類

    • Grade I:軽い振幅で痛みの緩和

    • Grade II:関節包内運動の緩和

    • Grade III:関節面の最大離開を促し、可動域を回復

  • Parisの体系:伸長法、漸進的振動法、段階的振動法を使用して、関節運動学的機能を回復

  • Maitlandの体系:振幅運動の大きさと速さにより5つのGradeを設定

    • Grade I:痛みの緩和

    • Grade II:関節包の緩和

    • Grade III:関節面の最大可動を促進

    • Grade IV:機能的運動の改善

    • Grade V:強力な振動で関節の最大可動域を拡大

5. 関節モビライゼーションの実際のアプローチ

  • 過小可動性へのアプローチ

    • 関節包内運動が制限されている場合、モビライゼーションにより滑りや転がり運動を促進

    • 関節内液の循環改善や関節包の伸張性を高め、可動域制限を解消

  • 過大可動性へのアプローチ

    • 関節の不安定性に対して、筋力トレーニングや安定性向上のための介入

    • テーピングや装具の使用により、関節の安定性を高め、過度の動きを制限

 

 

ケーススタディ1:肩関節後方関節包の拘縮

患者の背景:50歳男性、主にデスクワークをしており、長時間同じ姿勢で作業

症状:肩関節の動きに制限があり、特に腕を上げたり回す動作に強い痛みを感じる

評価内容:肩関節の後方に硬直が認められ、外転・外旋動作に制限があり、疼痛が伴う

アプローチ:後方へのGrade IIIの関節モビライゼーションを実施、関節包の伸展と可動域の回復を目指す

治療結果:治療後、肩の動きがスムーズになり、仕事や日常生活での腕の使用において痛みが軽減

 

ケーススタディ2:膝関節の過大可動性

 

患者の背景:30歳女性、アクティブなライフスタイルで、特にスポーツ活動を頻繁に行う

症状:膝関節に不安定感を覚え、ランニングやジャンプ時に膝のぐらつきが気になる

評価内容:膝関節の過剰な可動性が確認され、大腿四頭筋の筋力低下も要因とされる

アプローチ:大腿四頭筋の強化トレーニングを実施し、膝装具で関節の安定性を補うアプローチを行った

治療結果:膝の不安定感が大きく改善し、スポーツへの復帰がスムーズに

 

6. 治療の進め方と注意点

  • クリニカルリーズニング:症例ごとにモビライゼーションの方法や強度を調整

  • 近隣関節の保護:治療中に他の関節や筋肉を保護し、過度な負担をかけないように配慮

  • 適切な手技選択:患者の状態に応じて、Kaltenborn、Paris、Maitlandの体系を使い分ける

7.臨床的エビデンス

``Effects of joint mobilization on pain and function in musculoskeletal conditions: A systematic review"(Pain Management and Rehabilitation Journal)‘‘

こちらの文献は膝関節症(KOA)患者に対する関節モビライゼーション(Joint Mobilization)の効果を評価した系統的レビューとメタ分析です。

背景

 膝関節症(KOA)は進行性の変性疾患であり、疼痛や可動域の制限、機能障害を引き起こします。関節モビライゼーション技術は、これらの症状を改善する可能性があると報告されており、本研究ではその臨床的有効性を検討しました。

方法

  • 対象文献: PubMed、Web of Science、Embase、Cochraneなどの英語データベース、および中国のCNKIなどからランダム化比較試験(RCT)を収集。

  • 分析手法: メタ分析ソフト(RevMan 5.4, Stata 17.0)を使用。

  • 評価項目:

    1. 疼痛の軽減(VASスコア)

    2. 機能改善(WOMACスケール)

    3. 可動域の変化(膝の屈曲・伸展角度)

結果

  • 疼痛の軽減: 関節モビライゼーション群は対照群よりも有意に疼痛レベルが低下(SMD=-1.69, p<0.0001)。

  • 機能改善: WOMACスケールの改善も見られたが、年齢や患者の状態によって効果が異なる(SMD=-0.74, p=0.02)。

  • 可動域の変化:

    • 膝屈曲: 関節モビライゼーションは対照群よりも効果が劣る可能性(SMD=2.3, p=0.00006)。

    • 膝伸展: 効果は対照群と比較して有意ではない(SMD=1.79, p<0.00001)。

結論

 関節モビライゼーションは膝関節症の疼痛と機能改善には有効だが、膝の可動域改善に関しては限定的な効果しかない可能性がある。今後は、長期的な効果や他の治療法との比較を行う研究が必要。

 

"The efficacy of joint mobilizations in improving range of motion and pain management in patients with shoulder and knee conditions"(Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy)

 

 この研究は、膝蓋大腿痛(PFP)患者における抵抗トレーニングの総量を均等化するかどうかが、痛みの強さや障害に与える影響を調査した系統的レビューとメタ分析です。

主な内容:

  • 対象: PFP患者を対象にしたランダム化比較試験(RCT)37件(1853名)。

  • 方法: MEDLINE、EMBASE、Cochraneなどのデータベースで検索し、抵抗トレーニング量を「均等化あり」と「なし」に分類。

  • 結果:

    • トレーニング量が多い群は、痛みの軽減障害の改善がみられた(介入直後とその後)。

    • トレーニング量が均等化されると、グループ間に有意な差はなかった

    • 筋力については、均等化の有無にかかわらず、差は見られなかった。

  • 結論: 証拠の確実性は低いものの、トレーニング量が多い方が痛みや障害の改善に有益である可能性が示唆された。

 

まとめと臨床アドバイス

  • 関節包内運動の制限や不安定性に対するモビライゼーションの効果を再確認。

  • 治療目標は関節の正常な運動学的機能を回復させること。

  • 関節の過小可動性や過大可動性に対して、適切なモビライゼーションや補助的手段(筋力トレーニング、テーピング、装具)の使用を提案。

 

本日の内容はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました。

 

8. 参考文献

  • Kaltenborn, F. (1993). Manual Therapy: Vol. 1: Spinal and Peripheral Joint Techniques.

  • Maitland, G. D. (2001). Maitland's Vertebral Manipulation.

  • Paris, S. V. (1996). The Paris System of Spinal Manipulation.

  • Effects of joint mobilization on pain and function in musculoskeletal conditions: A systematic review"(Pain Management and Rehabilitation Journal)
  • "The efficacy of joint mobilizations in improving range of motion and pain management in patients with shoulder and knee conditions"(Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy)