本日もご覧いただきありがとうございます。本日のテーマは小脳性認知情動症候群についてです。
「小脳=運動の司令塔」と学んできた方も多いかもしれません。
しかし近年、小脳が“思考”や“感情”にも深く関わっていることが明らかになってきました。
なかでも注目されているのが「小脳性認知情動症候群(Cerebellar Cognitive Affective Syndrome:CCAS)」という病態です。
この記事では、CCASのメカニズム・症状・評価・リハビリのポイントを、理学療法士の視点からわかりやすく整理します。「なぜかリハビリが進みにくい」そんな患者さんに出会ったとき、本記事が新たな視点のヒントになれば幸いです。
それではいきましょう。
小脳が“考える”って本当?
〜小脳性認知情動症候群(CCAS)とリハビリの可能性〜
「小脳=運動の調整装置」と考えられていた時代は、すでに過去の話です。近年の研究により、小脳は認知や情動のコントロールにも重要な役割を果たしていることが明らかになっています。
この新たな視点から注目されているのが、小脳性認知情動症候群(Cerebellar Cognitive Affective Syndrome:CCAS)です。これは小脳、特に後葉や虫部が障害されることで起こる、認知と感情の複合的な障害群を指します。
🔍 小脳の認知ループとは?
これらの一部が障害されると、小脳性認知情動症候群(CCAS)と呼ばれる症状が現れます。
例)遂行機能障害
空間認知障害
感情障害
前頭前野は46野にあり、小脳虫部との線維連絡があるため、注意転換などの全体を統括する役割があり、この経路に障害が起こると認知機能の低下が起こります。
①プランニングの障害、セット転換、抽象的思考、作業記憶、言語流暢性
②視空間の統合障害、視空間記憶の障害
→運動前野
③吃音の障害、失文法、軽度の失語
→左半球の認知行動抑制回路
④情動の平極下、脱抑制、易怒性、人格障害
小脳は前頭前野(とくに46野)と強く連絡しており、「プランニング」「注意の転換」「抽象思考」などの実行機能(executive function)を調整しています。これが障害されると以下のような問題が起きます。
🧠 CCASの主な症状(4分類)
領域 | 症状 | 関連する大脳領域 |
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① 遂行機能 | 作業記憶・計画・言語流暢性の低下 | 背外側前頭前野 |
② 視空間認知 | 模写困難・空間記憶障害 | 運動前野・頭頂連合野 |
③ 言語障害 | 吃音・失文法・軽度失語 | 左側前頭葉(Broca周辺) |
④ 情動障害 | 易怒性・感情の平板化・人格変化 | 眼窩前頭皮質・帯状回 |
💡 理学療法士(PT)としてできるリハビリの工夫は?
CCASにおけるリハビリの鍵は、「運動」と「認知・情動」を組み合わせた介入を行うことです。例として、
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遂行機能が低下している患者:「予測して動く課題」や「2ステップ指示」の実践が効果的
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視空間障害がある場合:ミラー療法やビジュアルガイドを使い、空間把握を支援
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感情の変動が目立つ場合:安心できる環境づくりと、ポジティブフィードバックが重要
このように、小脳性障害には“脳の協調運動”を支えるような介入が求められます。
さらに具体的なリハ戦略や、臨床での見分け方については、以下の有料記事で詳しく解説しています。