@pt.リハビリnote

臨床の気になること、疑問に思った事を深掘りしていきます🌸

大腿骨近位部骨折の分類と治療戦略 ― 頚部骨折・転子部骨折・CT評価を含めた包括的理解 ―

 

 

 

本日もご覧いただきありがとうございます。本日のテーマは、頚部骨折と転子部骨折についてです・

  • X線による基本分類(Garden分類など)

  • AO/OTA分類の細分類(2018改訂)

  • CTを用いた不安定性評価(一次骨折線分類)
    の順で、分類と治療戦略を統合的に整理していきます。

 

 

 

1. 骨折の種類と発生機序

 大腿骨近位部骨折は、高齢者に多くみられる骨折であり、特に転倒による低エネルギー外傷が主因です。
発生部位に応じて、骨頭、頚部、骨頭下、頚基部、転子部、転子下部に分類され、治療方針やリハビリ戦略はそれぞれ異なります。

分類 損傷エネルギー 主な発生要因
骨頭骨折・転子下骨折    高エネルギー     交通事故・労働災害   
頚部骨折・転子部骨折 低エネルギー 高齢者の転倒

 

 

2. 頚部骨折の分類と臨床意義

◆ 関節包内骨折:大腿骨頚部骨折

  • 骨頭への血流が限定的で、骨癒合不全・骨頭壊死のリスクが高い

  • Garden分類Pauwels分類が代表的な評価法

Garden分類(X線所見に基づく)

ステージ  骨折状態   転位  特徴 治療方針
I 不完全骨折 骨頭外反、若木骨折型 骨接合術(CHS/スクリュー)
II 完全骨折 骨梁の連続性あり 骨接合術
III 完全骨折 骨頭内反、骨梁が水平化 高齢者は人工骨頭考慮
IV 完全骨折 骨頭完全遊離、骨梁不一致 人工骨頭/人工関節置換術

 

Pauwels分類(骨折線の傾斜による)

  • 傾斜が急なほど剪断力が大きく不安定性が高い

  • 骨癒合予測にはやや不向きだが、転位リスクの指標として有用

 

3. 骨癒合・骨頭壊死率の比較

分類      骨癒合率(6か月)    遅発性骨頭圧潰率   
Stage I 約60% 約16%
Stage II 高率(データ少) 比較的低
Stage III 17%(女性) 約27.6%
Stage IV 12%(女性) 約27.6%

 

4. AO/OTA分類による転子部骨折の理解

◆ 関節包外骨折:転子部骨折(Type 31-A)

分類      骨折形態       安定性       主な術式         
A1 単純2骨片 安定型 DHS/CHS
A2-1 小転子単独骨片 軽度不安定 DHS/CHS(慎重適応)
A2-2/A2-3 多骨片 不安定型 髄内釘(CMN)
A3 逆斜/横骨折 高度不安定型 髄内釘/特別固定具

◆ Subgroup分類(2018改訂)

AO分類    骨折パターン         特徴            
A1-1 転子間線を貫く単純骨折 基本型
A1-2 骨折線が大転子に及ぶ 外側構造に影響あり
A1-3 骨折線が小転子遠位まで やや不安定要素あり
A2-1 後内側に単独骨片 内側支持が一部保たれる
A2-2 複数の中間骨片を伴う 粉砕型、転位リスク高
A2-3 小転子下1cm以上へ進展 内側支持完全消失
A3-1 逆斜骨折 剪断力強、転位しやすい
A3-2 横骨折 荷重不安定
A3-3 多骨片(粉砕型) 骨接合困難、高リスク

 

5. CTによる転子部骨折の評価

◆ CT分類:一次骨折線の走行パターン

分類 骨折線の方向 特徴 臨床意義
Type I(近位斜走型) 小転子 → 大転子方向の近位斜走線 骨頭部/大転子/小転子/骨幹部を含むことあり 不安定型が多い
Type II(遠位走型) 小転子から遠位(大転子下方)へ横走・遠位走線 骨幹部へ骨折線が進展 比較的安定な骨折もある

 

 Type Iでは、以下の4セグメントによる9分類も存在

  • 骨頭部、

  • 大転子部、

  • 小転子部、

  • 骨幹部

小転子後内側骨片あり=不安定型

 

◆ 外側壁(Lateral wall)の評価

  • 外側壁厚 < 20.5mm転位リスク増

  • DHS単独では固定困難とされ、CMNなどの使用が望まれる

  • CTで壁の厚みや粉砕状態を正確に評価できる

 

6. リハビリテーションにおける分類の応用

骨折分類 安定性  術後対応 PT戦略例
Garden I-II / AO A1-A2-1 安定型 早期荷重が可能なことが多い 起立訓練・歩行訓練を段階的に進行

Garden III-IV / AO A2-2以降 /   CT Type I(不安定)

不安定型 荷重制限・免荷指示あり ADLに応じて漸進的に荷重を調整
CT:外側壁破綻例 高リスク 転倒・再転位に特に注意 起立・歩行練習時に介助強化

 

おわりに

大腿骨近位部骨折は、解剖学的分類・X線評価・CT分類の3つを総合的に理解し、

  • 術式選択

  • 骨癒合予測

  • リハビリ計画立案
    に活かすことが重要です。

 

 

 AO/OTA分類とCT所見の組み合わせは、術後の機能予後を大きく左右し、理学療法士にとっても介入設計の根拠となります。

 今後も画像評価の進化に伴い、より精緻な分類と個別化対応が求められるでしょう。

 

 本日の内容はここまでとなります。最後までご覧いただきありがとうございました。